工房鈴蘭では、これまでさまざまな色や表現に挑戦してきました。
その中でも、私たちにとって特別な存在だったのが「銀」です。

銀色には、落ち着きや上品さがあり、どこか特別な雰囲気があります。
以前から「いつか工房鈴蘭らしい銀を作りたい」と考えていました。
しかし、実際に作り始めると、思っていた以上に難しいものでした。

一番難しかったのは、グラスと塗りの密着でした。
実は、ガラスと塗りは相性があまり良い材料同士ではありません。
木製品に塗るような方法では、塗りがペロリとはがれてしまいます。
まずは材料の性質を知ることから始まり、それを工房鈴蘭なりに改良しながら試作を繰り返しました。
※写真のキズは、密着テストの跡です。
密着テストでは、塗膜に細かなキズを付け、その上から強力なテープを貼ってはがします。
塗りが一緒にはがれないかを確認するための試験です。
3層目までうまくいっても、4層目で突然はがれてしまう。

5層目まで成功したと思ったら、なぜか2層目からはがれてしまう。
「今度こそ!」
「今度こそ!」
「今度こそ!」
そう思って進めても、
「あれ?!」
「なぜ??」
また最初から。

とにかく失敗の繰り返しでした。
密着がうまくいくようになっても、今度は色が思うように出ません。

出したい銀にならないのです。
少し違う。
何かが違う。
そんな試作が何度も続きました。
正直、父も私も、お互いに口には出しませんでしたが、
「無理なのかもしれない」
と心の中で少し思っていたかもしれません。

※試作失敗の一部です
私たちは会津で、家族みんなでものづくりを続けています。
大量生産ではなく、一つひとつ手作業で仕上げています。
小さな工房だからこそ、大切にしたい思いがあります。
その思いだけを胸に、試作を繰り返しました。
気が付けば、たくさんの失敗が今の商品につながっていました。
もちろん、今でも商品作りと並行して試作は続けています。

もっと良くできるかもしれない。
別の表現があるかもしれない。

そんなことを考えながら、今日も工房で作業をしています。
銀シリーズも、そうした試行錯誤の中から生まれた商品のひとつです。
銀には、派手さはありません。
でも、光の当たり方や見る角度によって、少しずつ色合いや表情が変わります。
じっくり眺めていると、新しい表情に気付く。
そんな奥深さがあります。
私たちが作りたかったのは、
今まで積み重ねてきた技術を詰め込み、
今の私たちにできる精一杯を形にした銀でした。
工房鈴蘭らしい銀。
それが、私たちの答えでした。

もし手に取っていただく機会がありましたら、
完成した商品だけでなく、
その裏側にある、たくさんの失敗や挑戦にも、
少しだけ思いを巡らせていただけたら嬉しく思います。
工房鈴蘭の記録

公開中
📖 工房鈴蘭の記録 #1|子どものお絵描きから生まれた赤べこシリーズ
📖 工房鈴蘭の記録 #2|家族みんなでものづくりが始まるまで
📖 工房鈴蘭の記録 #3|工房鈴蘭らしい銀を作りたかった
公開予定
📖 工房鈴蘭の記録 #4|みんなが大好きな乾燥室
📖 工房鈴蘭の記録 #5|工房で過ごした夏休み



